対談

2010.07.19

庄野真代さん歌手

第2回 病気や入院が教えてくれたもの
    一見マイナスの要素も心がけでプラスに

庄野
基本的に、楽天的ですね。落ち込むことはあっても、ずっと落ち込んでいられない、途中で起き上がろうとする自分がいるんです。
潮田
庄野さんは、ご自分に対しての信頼があるんだと思います。具体的に言うと、落ち込みたいときは、とことん落ち込ませてあげる度量がある。人間ってとことん落ち込むと、這い上がってくるんですよ。下手に落ち込むのを我慢すると、心残りや、ゆがみが生じて、肉体や精神的な部分に変調が現れることもあります。
庄野
そういえば、私の身体は、私のスケジュールをよく知っているなあ(笑)って思うことがあって・・。
実は、元気そうに見えますが…子供の頃から今までに15回も入院をしているんです。 でも、その時期が大切な仕事や人生の一大事などに被らないような、絶妙のタイミングで…。1999年に顔面を骨折するという大怪我して入院を余儀なくされて、同時に子宮筋腫も抱えている状態だったんですね。
その時に思ったのが「どうせ入院をするのだから、徹底的に身体のメンテナンスをしてしまおう」って。婦人科の受診をお願いしたら『40歳過ぎているのだから、子宮を切除しても問題ないでしょ?』というお医者様に言われて…。その言い方にちょっとカチンと来て、それで自分が納得できるようセカンドオピニオンもサードオピニオンも受けました。でも結果は“切除”しかないと。
いろいろな本も読みましたよ、子宮筋腫の。本は二通りの種類しかないんです。ひとつはお医者様サイドからの「切除したほうがいい」という論調の本。そして、もう一方は女性側の「切らないで治す」というタイプのもの。私の探していた「切除したらその後どうなるのか?」という事実を書いた本は皆無でした。

貴重な体験を残しておきたい
他の人にも役立ててほしいと思って…。

庄野
切除すると決めてからは、この体験をすべて残そうと、記録魔になりました。カルテも見せてもらって、きちんと説明を受けて、納得しながら治療を進めました。
私も勉強して、「こんな治療法もあるけど、どう思います?」と提案することも。お医者様とコミュニケーションしながら、身体のリフォームをしている感覚でした。そんな風に考えると入院生活も楽しくなったりして…。納得して手術を受けることができました。
潮田
庄野さんは、本当に自分に正直で、なおかつ諦めない強い意志がありますね。生きるってことに貪欲で、自分も周りも大切にする。失敗を恐れないで前に進む力がすごく強いと思います。
自分を大切にしないと、人生って茨の道を歩むことになるんです。経験というのは、それだけをとるとプラスもマイナスもない。
それなのに多くの人は失敗を恐れて、行動に移さない。行動を重ねていくことで思いがかなうことを忘れている気がします。
やりたいという気持ちを大切にする…躊躇しないで自分に「許可」を与える、ゴーサインを出す。その行動が大切です。準備が整うのを待っていたら、いつまでたっても何かを始めることはできません。意欲が湧いたら→行動する。結果は後からついてきます。
庄野
そういえば前回も話しましたが、パッと浮かんだアイデアを大切にして、実行すると、それから派生していろいろな物が生まれてくる気がしますね。
もちろん、人に相談して反対されることもありますね。
潮田
反対されることも実は大切なことです。反対されたときこそ、自分の本心があぶり出されることがありますね。本当はどうしたいのかというね…。
賛成の意見も反対の意見も、それを与えてくれる信頼できる仲間があってこそもらえるもの。人生は螺旋階段のようだと思うんですね。真っすくじゃないけれど、確実に昇っていく。それには決断を積み重ねて行くことが大切になってくる。自分で決断をして、その結果が表れ、受け止める──それは人生の醍醐味ですね。
15回も入院をしたということは、子供の頃は病弱だったのですか?
庄野
そうですね。小学校の3年生で大きな手術をして、面会謝絶のこん睡状態が4日間続いて、目覚めたんです。そのとき子供心に悟ったのは「この状況は誰かが変わってくれるものじゃない。自分で受け止めないといけない」って。強くなった気がしましたね。
潮田
庄野さんは、保育器にいたでしょう? 生まれた時。
庄野
はい、なぜわかったんですか?
潮田
庄野さんは、まるでジャンヌ・ダルクのように「平和と愛を広めたい」って思いが強くて、もう一刻も早くこの世に生まれたいから、早く出てきてしまったんです(笑)。
庄野
そういえば、子供の頃から初詣のお願いごとに、自分や家族のこと以外にいつも「世界が平和になりますように」って願っていましたね(笑)。
潮田
やはりそうでしたか(笑)。赤ちゃんの時から入院してらっしゃいますが、子供の入院は親の愛を確かめるため、大人の入院は休息のためという側面があるんですよ。庄野さんは自分を追い込んで頑張ってしまうところがあるから…時に御休みも必要ですよ。愛と平和についての活動を長く実践したいなら、休息もとらないと。
庄野
そうですね。自分と向き合って心と身体の声を聞きながら、前向きに進んでいきたいと思いますね。自分のためだけじゃなく、もっと大きな意志を持って。